交通事故裁判例
当職が担当した事件のうち、公刊物に掲載された事案について紹介しております。
後遺障害事案の裁判例は、公刊物に掲載されたものが少ないため、こちらではあまり紹介しておりません。
後遺障害事案に関する参考となる裁判例については、公刊物未掲載のものも含め、交通事故・全国弁護士ネットワークのホームページで多数紹介しておりますので、そちらもご参照ください。
№ | 判決日 | 裁判所 | 出展 | 要旨 |
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1 | H13.8.30 | 札幌地裁 | 判例時報1769号93頁 判例タイムズ1089号223頁 | 原告の47年間の労働能力喪失期間のうち、当初5年間は年3%を基準として、その後の42年間は年5%を基準として、ライプニッツ方式により中間利息を控除して、原告の逸失利益を算定するのが相当であるとして、請求の一部を認容した事例。 |
2 | H15.11.26 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル1533号 最高裁判所民事判例集59巻5号1032頁 金融・商事判例1225号22頁 | 逸失利益算定における中間利息控除率を3%とした裁判例。 |
3 | H15.11.28 | 札幌地裁 小樽支部 | 判例時報1852号130頁 | 逸失利益算定における中間利息控除率を3%とした裁判例。 |
4 | H16.7.16 | 札幌高裁 | 最高裁判所民事判例集59巻5号1054頁 金融・商事判例1225号16頁 | 逸失利益算定における中間利息控除率を3%とした高等裁判所としては、はじめての裁判例。 |
5 | H16.8.20 | 札幌高裁 | 自動車保険ジャーナル1533号 | 逸失利益算定における中間利息控除率を3%とした裁判例。 |
6 | H17.6.14 | 最高裁 | 自動車保険ジャーナル1595号 最高裁判所民事判例集59巻5号983頁 裁判所時報1389号6頁 判例時報1901号23頁 判例タイムズ1185号109頁 | 上記4番の上告審。中間利息控除率は5%でなければならないとした。 |
7 | H17.6.14 | 最高裁 | 自動車保険ジャーナル1595号 交通事故民事裁判例集38巻3号631頁 | 上記5番の上告審。中間利息控除率は5%でなければならないとした。 |
8 | H18.8.11 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル1664号 | 被害者の逸失利益について、年2%での昇給加算を肯定した事例。 |
9 | H18.8.25 | 札幌高裁 | 自動車保険ジャーナル1666号 | 国道を横断する自転車に、加害車両が衝突した事案。原審は、自転車側にも15%の過失があると判断したが、控訴審においては、加害車両が約130㎞の高速で走行していたことを認定し、被害者には過失がないと判断した。 |
10 | H19.1.26 | 札幌高裁 | TKC判例情報データベース 最高裁判所判例検索システム 自動車保険ジャーナル1772号 | 深夜、飲酒運転の車両が自転車に衝突してひき逃げをした事案。飲酒運転の車両の同乗者についても、救護措置をとらなかったことから、損害賠償責任を認めた事例。 |
11 | H19.5.18 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル1771号 | 5級の高次脳機能障害の被害者で、就労をしている事案について、通勤などの際に一定の介護が必要であるとして、介護料日額3,000円を認めた事例。詳細はこちらを参照してください。 |
12 | H19.12.21 | 旭川地裁 稚内支部 | 自動車保険ジャーナル1737号 | 交通事故により遷延性意識障害となった被害者に関する裁判例。詳細はこちらを参照してください。 |
13 | H20.4.18 | 札幌高裁 | 自動車保険ジャーナル1739号 最高裁判所判例検索システム | キツネが高速道路に飛び出して死亡事故が起きた事件で、原審判決を取り消して、高速道路を管理する旧公団(現東日本高速道路株式会社)がキツネを含む中小動物の高速道路への侵入防止対策を講ぜず、高速道路としての通常有すべき安全性を欠いていたとして、道路の設置、保存の瑕疵を認め、同会社に対し損害賠償を命じた事例。 また、原審で認定したライプニッツ方式による逸失利益算定方式を変更し、ホフマン方式による算定方式を採用した事例。 |
14 | H21.5.26 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル1817号 | 高次脳機能障害等(1級)の被害者について、母67歳まで日額10,000円、それ以後日額18,000円の介護費用を認めた。 自賠責保険で、被害者側に重過失があるとされた事案において、裁判では、被害者の過失を45%とした。 なお、高裁で、一審判決とほぼ同内容で和解が成立している。 |
15 | H21.10.20 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル1819号 | 5級の高次脳機能障害につき、日額1,000円の介護費用を認めた事例。 |
16 | H22.1.26 | 最高裁 | 自動車保険ジャーナル1819号 | 13番の上告審判決(その1)。 ホフマン方式での逸失利益の算定について、肯定した。 |
17 | H22.3.2 | 最高裁 | 自動車保険ジャーナル1819号 裁判所時報1503号2頁 最高裁判所判例検索システム | 13番の上告審判決(その2)。 最高裁判所は、旧日本道路公団の責任を否定した。 |
18 | H24.2.20 | 最高裁 | 最高裁判所民事判例集66巻2号742頁 裁判所時報1550号5頁 判例タイムズ1366号83頁 金融・商事判例1391号28頁 判例時報2145号103頁 金融法務事情1949号79頁 最高裁判所判例検索システム | (1)交通事故の被害者が、人身傷害保険の保険金を受領した後に、加害者(賠償義務者)に対して損害賠償請求訴訟を提起し、過失相殺が認められる場合の保険代位の範囲についての初の最高裁判例(保険会社に有利な絶対説を採用した高裁判決を破棄し、被害者に有利な裁判基準差額説を採用したもの。)。 (2)人身傷害保険金を支払った保険会社は、損害金元本に対する遅延損害金の支払請求権を代位取得することはない。ただし、人身傷害保険金支払日までの遅延損害金は、賠償義務者に請求することができる。 |
19 | H28.3.30 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル1991号 | 遷延性意識障害の被害事例について、高額賠償が認められた事例。将来の入院医療費について、年額840万円(健康保険給付等の公的給付を考慮しない額)を認めた裁判例。 |
20 | H29.4.7 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル2000号 | 自賠責保険において高次脳機能障害及び脊髄損傷のいずれについても非該当とされた事案につき、裁判において、高次脳機能障害(9級相当)、脊髄損傷(9級相当)が認められた事例。 |
21 | H29.6.23 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル2003号 | 交通事故により重度の後遺障害を負った被害者が、後遺障害逸失利益について定期金賠償の方法による支払を求めたのに対し、定期金賠償の方法による支払を命じた判決。 |
22 | H30.6.29 | 札幌高裁 | 判例時報2420号78頁 判例タイムズ1457号73頁 自動車保険ジャーナル2028号 | 上記21番の控訴審。交通事故により重度の後遺障害を負った被害者が、後遺障害逸失利益について定期金賠償の方法による支払を求めたのに対し、定期金賠償の方法による支払を命じた一審判決の判断が控訴審判決で是認された事例。 |
23 | R元.11.27 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル2065号 | 政府保障事業の支払期限に関する自賠法73条の2第1項(平成20年の改正法で新設)の「当該請求に係る自動車の運行による事故及びてん補すべき損害の金額の確認をするために必要な期間」について判断した裁判例。請求書提出から約半年後が「調査をするために必要とされる合理的期間」であるとされ、その時点で遅滞に陥るものとされた。 |
24 | R2.1.28 | 札幌地裁 | 自動車保険ジャーナル2065号 | 政府保障事業の支払期限に関する自賠法73条の2第1項(平成20年の改正法で新設)の「当該請求に係る自動車の運行による事故及びてん補すべき損害の金額の確認をするために必要な期間」について判断した裁判例。請求書提出から約5か月間が「調査をするために必要とされる合理的期間」であるとされ、その時点で遅滞に陥るものとされた。 |
25 | R2.7.9 | 最高裁 | 最高裁判所民事判例集74巻4号1204頁 裁判所時報 1747号14頁 判例タイムズ 1480号138頁 判例時報 2471号49頁 金融法務事情 2157号56頁 金融・商事判例 1608号8頁 自動車保険ジャーナル2068号 最高裁判所判例検索システム | 上記22番の上告審。交通事故の被害者が後遺障害逸失利益について定期金賠償を求めている場合に,同逸失利益が定期金賠償の対象となるとされた事例(最高裁の初判断)。 |
26 | R5.2.27 | 札幌地裁 | ウェストロー2023WLJPCA02276011 | 賠償義務者(加害者)に対する民事訴訟(前訴)が和解により解決した後に人身傷害保険の請求がなされた場合、前訴の裁判所が遅延損害金に充当する旨を明示した自賠責保険(被害者請求)からの支払額を、人身傷害保険金の計算上控除すべきか否かについて判断した裁判例。 原告は控除すべきではない旨を主張し、被告(保険会社)は全額控除すべきことは約款上で明らかである旨を主張していたところ、裁判所は「人身傷害保険金が填補対象としていない金員が支払われた場合、これを既払金として控除しないのは(人身傷害保障)条項の前提となっている基本的考えである」などとして、原告の主張を認め、控除しない旨を判断した。 この判決の解説(PDF)はこちら |