札幌の「青野・広田・おぎの法律事務所」交通事故被害について、詳しく解説します

青野・広田・おぎの法律事務所

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交通事故被害 遷延性意識障害等の解決事例

遷延性意識障害等の常時介護が必要な被害者について、総額4億円を超える損害賠償が認められた事例

常時介護が必要な重度後遺障害の高額賠償事例

常時介護が必要な重度後遺障害(遷延性意識障害、重度の高次脳機能障害と身体麻痺の併存事例、脊髄損傷等。自賠責保険の等級認定では1級となります。)の被害事例では、被害者ご本人が生涯にわたり労働できない状況となります。さらに、介護費用(施設で介護する場合には施設費、在宅介護の場合には家族の労力やヘルパー等の費用)、車椅子や介護用車両等の各種介護用品の取得費用や買換費用も発生するため、被害者及びそのご家族は、経済的に極めて大きな不安を抱えることになります。また、遷延性意識障害や重度の高次脳機能障害の場合には、成年後見制度の利用も必要となり、法的な問題にも対処しなければならなくなります。
交通事故の損害賠償の中でも、重度後遺障害の事案は、裁判や示談交渉において、損害額の立証を的確に行うことが特に重要となり、立証の程度、裁判をするか否か、保険の利用の順序等によっても賠償額が大きく増減します。
このページでは、重度後遺障害の事案において、高額賠償が認められるために必要な立証について、ご説明いたします。

介護料や家屋改造費用等の個別の損害立証

民事裁判では、介護の内容、介護にかかる労力や費用、家屋改築の必要性等について、弁護士と被害者家族が二人三脚で、丁寧に主張・立証していくことになります。この点を的確に立証できるかどうかが、適正な賠償が認められるか否かに直結します。
当事務所は1級の事案だけで、20件以上の事案を担当しておりますが、【表1】は、そのうち、特に高額な解決(総損害額4億円以上)となった5件について、損害の内訳を一覧表にしたものです。
【表1】の5事例は、全て民事訴訟を提起し、裁判上の和解をしたものです。
なお、事例5は、札幌地裁平成28年3月30日(自動車保険ジャーナル1991号)の裁判例の控訴審(札幌高等裁判所)において和解した事案であり、裁判所の和解勧告(1審判決と同内容)に基づき和解が成立し、治療費等を含めて総額4億9896万円 が認められました。

もっとも、この額には、国民健康保険からの将来の医療費の求償分が含まれています。そのため、訴訟終結後、自治体と協議し、国民健康保険の医療費部分(約6000万円)を自治体に返金する手続をとっていますから、この事例の実質的な賠償額は約4億4000万円となります。

【表1】 高額解決事例の損害費目の内訳

【表1】高額解決事例の損害費目の内訳

上記の各損害項目は、重度後遺障害の場合の主要な損害項目となりますので、それぞれについて、少し補足説明します。

付添介護費用(症状固定時まで)

「付添介護費用(症状固定時まで)」は、事故日から症状固定日までの期間において、ご家族が被害者のために、病院や自宅において付添看護をした費用のことです。これについては、保険会社側は「(入院中に)付き添っていた事実は証明されていない。」とか「現在の病院は『完全看護』なので、家族の付添は必要ない。」という反論を必ずしてきますので、①家族が付き添ったこと、②家族の付添が必要であったこと、の証拠を用意しておくことが必要になります。

逸失利益

「逸失利益」とは「交通事故がなければ働いて得られたであろう生涯収入の現在価値」のことです。通常は事故前年の現実収入をベースに計算しますが、学生や若年者の場合には、賃金センサスの平均賃金を使って計算することになります。また、勤務先が大手企業等で昇給のモデルや生涯賃金の計算が可能な場合には、勤務先の協力を得て、生涯収入の額を個別に立証するケースもあります。

将来介護費用

「将来介護費用」とは、介護のために必要なヘルパーの費用、施設や病院の費用等です(ご家族が介護する場合には、その介護行為を金銭換算した額を含みます。)。遷延性意識障害の場合であれば、車椅子での移動、食事介助、更衣の介助、おむつ交換、入浴介助、サクション(痰吸引)、投薬等、日常生活において様々な介護が必要になります。将来介護費用の額は、事案によってかなり大きく異なりますが、その最大の要因は、この将来介護費用について適切な証拠資料を準備できるかどうか、という点にかかっています。
【表1】を見ていただくとわかるとおり、損害項目の中で、どの事案でも、この項目が占める割合が一番大きくなります。

将来介護雑費

「将来介護雑費」とは、介護のための雑費(おむつ、尿取りパッド、カテーテル、介護用手袋等の様々な介護用の消耗品)にかかる費用です。

家屋改築・建築費用

「家屋改築・建築費用」とは、自宅を介護用の住宅に改築したり、建替えた場合の費用です。ただし、改築費等が全て認められるわけではなく、後遺障害のために改築せざるを得なかった部分のみが賠償の対象となります。特に、新築・建替えの場合には、どこまでが「交通事故による後遺障害と因果関係のある建築費用」なのか、立証は難しくなります。建築士や建築業者と協力して、丁寧な立証をして、裁判官に改築や新築の必要性を理解してもらうことが必須となります。【表1】の事例4は、介護用の住宅を新築した事案ですが、新築費用のうち、2800万円以上が損害として認められています。一般的には、裁判所が認める家屋改築費用は高くても1000~1500万円程度が上限とされていますが、建築業者と協力して、新築する自宅の設計のうち被害者の後遺障害によって増額せざるを得なかった金額を丁寧に立証したことが高額の認定につながったと考えています。

介護用品等取得費用・買換費用

「介護用品等取得費用」とは、車椅子、介護用ベッド、介護用車両、リフト、痰吸引器(サクション用)、パルスオキシメーター、装具等の介護用の機器の購入費用です。
また、「介護用品等買換費用」は、それらの介護用品を将来買い換える場合の費用です。これらの費用が認められるためには、介護用品の必要性、単価、耐用年数等を丁寧に立証していくことが必要となります。

慰謝料

「慰謝料(後遺障害)」とは、重度の後遺障害を負った被害者の精神的苦痛を金銭に換算したものです。日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)では、1級の後遺障害慰謝料は2800万円とされています。ただし、近年では、将来、長期にわたって介護を担っていく家族固有の慰謝料も認められるようになっており、本人分と家族分を合計して3000万円を超える例も少なくありません。
本件5事例の慰謝料は、3100万円~3800万円となっています。なお、3800万円の慰謝料が認められた事例3は、加害者側の保険会社及びその代理人弁護士の対応があまりにも酷く、当事務所が金融庁に行政指導を申し入れた事案であり、その経緯も裁判において丁寧に立証した結果、裁判所が、高額の慰謝料を含む和解案を提示し、保険会社も受諾しました(おそらく、保険会社の不当な対応が、裁判例として残ることを回避したかったものと思います。)。

その他の損害

以上に述べた他にも、交通事故が原因となって発生する損害には様々なものがあります。被害者として「この費用は交通事故による損害ではないか?」と思ったら、領収書等の証拠を保管しておき、弁護士に相談してください。

遅延損害金及び弁護士費用

最後に、高額な賠償額が認められるためには、遅延損害金と弁護士費用相当額も重要になります。判決の場合には、遅延損害金(年3%。なお、令和2年3月31日以前の事故については年5%)と、弁護士費用(損害額の概ね10%程度)が賠償額に加算されます。和解の場合には、これが加算されないことが通常ですが、【表1】の5事例は、いずれも遅延損害金や弁護士費用の額として相当な金額が加算されています。「遅延損害金や弁護士費用」が加算されるかどうかは、①裁判の進捗状況、②判決となった場合のリスク(過失割合や各損害の算定について、裁判所の和解案よりも低額の判決となるリスク)の有無との兼ね合いで難しい判断となります。本件5事例は、いずれも立証が十分にできていると確信できるケースだったので「判決と同様に遅延損害金と弁護士費用を加算しなければ、原告は和解しない。」と主張し、弁護士費用相当額と和解時点までの遅延損害金も加算した和解が成立しています。例えば、事例1は、裁判所の最初の和解案に対し、遅延損害金等として6000万円の増額を強く求め、最終的に被告側も受諾して和解が成立しています。

各保険からの支払の順序

交通事故の被害者に対する損害の填補の方法は、加害者側の任意保険(対人賠償責任保険)、加害者側の自賠責保険、被害者側の人身傷害保険等、被害者の被った損害を填補するための支払を受ける手段がいくつかあり、どのタイミングでどの支払を受けるかも重要です。
本ページの末尾の【表2】は、【表1】の事例について、実際に、どのような順序で支払を受けたのかを整理したものです。
通常の解決までの流れは、以下のとおりとなります。

①任意保険(対人社)からの治療費等の支払

通常のケースでは、まずは、事故直後から発生する様々な損害(治療費や休業損害)について、加害者側の任意保険会社(以下「対人社」と言います。)が随時支払を行います。末尾の【表2】で「①任意保険(対人社)」と記載されているものは、提訴前に対人社が病院に直接支払ったり、被害者の毎月の給与額を補償するために支払われた金額の合計額です。

②自賠責保険の被害者請求による後遺障害等級認定と4000万円の支払

しばらくの間は、対人社から治療費・休業損害等の支払を受けながら、治療を継続していきます。重度後遺障害の事例は治療期間が長期化することが多く、短くても1年程度、遷延性意識障害のケースで意識回復を目指して治療を継続し、症状固定までに3年以上が必要となることもあります。主治医が「これ以上は医療行為をしても大きな改善は見込めない」と判断した時点(これを「症状固定」と言います。)で、主治医に「後遺障害診断書」を作成してもらいます。この「後遺障害診断書」を、被害者が自賠責保険会社に提出して、後遺障害分の損害賠償額の支払を求めることを「被害者請求」と呼んでいます。被害者請求をすると、自賠責保険会社は、後遺障害の等級を認定し、等級に応じた損害賠償額を支払います。1級の後遺障害が認定された場合には、通常は4000万円が支払われることになります(被害者の年齢によっては、4000万円未満のこともあります。)。
本件5事例は、いずれも自賠責保険の被害者請求を行っており、1級の後遺障害が認定されて4000万円が支払われています。
この4000万円は、被害者に、一括で、直接支払われますので、このお金を使って、家屋改築や介護用車両の購入等の将来介護の準備を整えることになります。実際に、家屋の改造をしたり、介護ヘルパーを手配したり、介護施設に入所したり、介護用品を購入することで、毎月の介護費用や介護用品の買換費用に関する具体的な証拠(領収書や介護計画)も揃います。民事訴訟は「証拠が全て」ですので、4000万円を元にしてどれだけの証拠を揃えるかが重要となります。

③人身傷害保険金の先行受領の検討

家屋改築に数千万円かかるケースもあり、そのような場合には被害者側が契約している保険会社の「人身傷害保険」を先行して受領することもあります。事例2、事例3、事例4のケースでは、人身傷害保険金を裁判前に先行して受領しています。
他方、事例1と事例5は、人身傷害保険金は受け取っていません。対人賠償責任保険は、通常、保険金の上限がない(無制限)ので、過失割合に問題がないケースでは、人身傷害保険金を先行受領しないこともあります。人身傷害保険金を受領すると、その部分については元本が減り、遅延損害金(令和2年3月31日以前に発生した事故については年5%、現在は年3%)が減少するというデメリットもあります。
なお、事例4では、加害者に対する民事訴訟の提起前に1億円を超える人身傷害保険金を受け取っていましたが、加害者に対する民事訴訟が終了して加害者側から2億8500万円の支払を受けた後に、さらに、追加で人身傷害保険金630万円以上の支払いを受けております。この際には、人身傷害保険の保険会社は、当初、追加支払を拒否したため、結局、保険会社と訴訟となり、勝訴しました(札幌地方裁判所令和5年2月27日判決)。この判決については、こちらに詳しく解説しております(保険会社が、自社の約款を都合よく解釈して払い渋りをした典型例です。)。

④介護方針の確定

重度後遺障害の場合には、提訴前に、将来介護の方針を決定します。当事務所では、常時介護が必要な遷延性意識障害、高次脳機能障害、脊髄損傷等の事案を多く担当しておりますが、この点は、毎回、被害者のご家族と相談しながら、非常に悩むことになります。大まかにいえば「病院での介護」「施設での介護」「在宅介護」のいずれかを選択することになりますが、これは、被害者本人の症状、ご家族の年齢や健康状態、自宅の状況(改築可能かどうか)などを総合的に判断し、被害者及びご家族が安心して生活していける方法は何か、ということを考えて決断することになります。
【表1】の5事例では、在宅介護のケースが3件、施設での介護のケースが1件、病院での介護のケースが1件、となっております。

⑤加害者に対する損害賠償請求訴訟について

自賠責保険の被害者請求による4000万円(必要ならば人身傷害保険金)の支払を受け、将来の介護の方針を決定し、家屋改築、在宅介護のためのヘルパーの手配、介護用品の取得等の準備を行い、領収書等の証拠を収集したうえで、民事訴訟を提起することになります。

【表2】 当事務所の高額解決事例5例

【表2】当事務所の高額解決事例5例

成年後見人の手続について

遷延性意識障害や重度の高次脳機能障害の被害者は、財産を管理することが困難な状況となりますので、成年後見人の選任手続が必要となります(被害者が未成年者の場合を除きます。)。
成年後見人の選任は、家庭裁判所に申し立てて行うことになります。通常は、被害者の配偶者、親、子等の最も近い親族が後見人となります。
成年後見人となった親族は、被害者の財産を適正に管理し、年に1回、家庭裁判所に報告書を提出することになります。当事務所では、成年後見人の申立の代理や、毎年の報告書作成の支援についても、適宜、サポートを行っております。
なお、高次脳機能障害の事案では、脳外傷後の認知機能が若干回復することで「後見レベル」ではなくなり、成年後見の取消を家庭裁判所に申請し、認められる場合もあります。
事務所では、裁判終了後も、継続的に被害者からのご相談を受けることが多く、毎年の家庭裁判所への報告書の作成のサポートをしたり、後見取消の手続の代理をすることにも対応しております。

更新日:2026年3月13日(担当弁護士青野渉)

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