1 はじめに
- Q1-1
- 交通事故の被害に遭いました。どこに相談すればいいでしょうか
- Q1-2
- 交通事故で亡くなる方は年間何人くらいでしょうか
- Q1-3
- 交通事故によりケガをする方は年間何人くらいでしょうか
- Q1-4
- 後遺障害とは何ですか。交通事故により後遺障害が残る方は、年間何人くらいでしょうか
- Q1-5
- 警察庁の統計データでは、交通事故の死傷者が最近20年ほどで大きく減少していますが、それは何故ですか
2 事故直後にしておくべきこと
- Q2-1
- 交通事故にあいました。相手の方が「警察には届け出しないでほしい。」と言っていますが、警察への事故の届け出はしなくてもよいですか
- Q2-2
- 交通事故にあってケガをしました。事故状況について、相手の言い分と自分の言い分が違うのですが、どうしたらいいでしょうか
- Q2-3
- 事故直後に必ずしておいたほうが良いことはありますか
- Q2-4
- 現在、交通事故で病院に通院しています。何か気を付けたほうがよいことはありますか
3 刑事事件について
- Q3-1
- 交通事故の被害にあいました。「民事事件」と「刑事事件」があると聞きましたが、どう違うのでしょうか
- Q3-2
- 交通事故の罪というのは、どのくらいの重さなのでしょうか
- Q3-3
- 刑事事件の流れについて教えてください
- Q3-4
- 被害者は、刑事裁判の中で、どのようなことができますか
- Q3-5
- 加害者の処罰がどうなったのかを知りたいのですが、加害者からも警察からも何も連絡はありません。加害者が処罰されたかどうかを知ることはできますか
- Q3-6
- 夫が交通事故で頭がい骨骨折の重傷を負ったのですが、警察官は診断書を受け取ってくれず「あなたのご主人の過失で起きた事故だから」と言って、人身事故として扱ってくれません。どうしたらいいでしょうか
- Q3-7
- 交通事故の処罰に関する法改正について教えてください
- Q3-8
- 「危険運転致死傷罪」とはどのような罪ですか。普通の交通事故とは違うのでしょうか
- Q3-9
- 被害者が刑事手続に参加できるようになったのはいつからですか。どのような経緯で法改正がなされたのでしょうか
- Q3-10
- 交通事故の被害者が、刑事記録を閲覧したり、コピーをもらったりすることはできますか
- Q3-11
- 交通事故の被害者は、過失運転致死傷罪の被害者として「犯罪被害者等給付金」を受領することはできますか
- Q3-12
- 刑事損害賠償命令とはどんな制度ですか。民事訴訟とは違うのでしょうか。また、交通事故の被害者も利用できますか
4 賠償問題と保険
- Q4-1
- 交通事故の場合に利用できる自動車保険について教えてください
- Q4-2
- 交通事故証明書とは何でしょうか。どこで取得できますか
- Q4-3
- 交通事故で負傷しました。加害者に対して、どのような損害が請求できるのでしょうか。また、請求するために必要な書類等はありますか
- A4-3
-
交通事故により負傷した場合に、一般的に請求できる損害は、以下のようなものです。
1 治療費
事故によるケガの治療費です。
加害者側の車両に任意保険がついている場合には、病院から、直接、保険会社に請求書(診断書、診療報酬明細書が添付されています。)が送付され、保険会社が病院に治療費を支払うことが通常です。この場合には、手元に資料がなくても特に心配ありませんし、後日、必要になった場合には、保険会社に問い合わせをすれば、診断書や診療報酬明細書のコピーをもらうことは可能です。
他方、加害者側が無保険だったり、加害者側の任意保険の保険会社が支払を拒否しているようなケースですと、被害者が、病院の窓口で治療費を支払うことになります。このようなケースでは、被害者自身が自賠責保険に請求する必要がありますので、病院の領収書や診療明細書は、必ず保管しておいてください。2 通院交通費
被害者自身が通院するための交通費です。
保険会社所定の「通院交通費明細書」に記載して請求することが通常です。
公共交通機関(バス・地下鉄・電車)の料金については特に領収書などの資料がなくても認められます。タクシー代は領収書が必須ですし、領収書があっても、保険会社は「タクシー利用の必要性がない。」として否定することもあります。なお、仮に、保険会社に支払拒否されても、重要な証拠となるので、交通費の領収書(タクシー等の領収書)は必ず保管しておいてください。3 入院の場合の費用
(1) 入院雑費
入院している場合には、定額で日額1,100円~1,500円程度の雑費がかかるとして認定される金額です。
通常は証拠が不要ですが、重度の症状で入院している場合には、上記の基準を超える雑費が発生することもありますので、領収書(病院のテレビカード代、スリッパ、タオル、ティッシュペーパー、お尻拭き、おむつ、尿取りパッド等のあらゆる支出の領収書)はすべて保管しておいたほうがよいです。(2) 付添看護料
症状が重く、入院中の被害者に、近親者が付き添った場合の費用です。被害者の年齢や症状の重さによっては認められますが、通常の怪我ですと、保険会社は支払を認めないことが多いです。
なお、そもそも「家族が本当に付き添ったかどうか」が争点になることも多いので、付き添った事実を証明する証拠を残しておく必要があります。
証拠としては、タクシーの領収書、病院近辺の駐車場の領収書等が有効です(手帳や日記、メモでも証拠となります。手帳に、付添時間や、その日の本人の症状、医師の説明等をできるだけメモしておいてください。)。4 休業損害
事故でケガをした被害者が、治療のために仕事を休み、収入が減少した場合に認められます。原則として勤務先に、保険会社所定の「休業損害証明書」を発行してもらい、これに源泉徴収票(事故前年度のもの)を添付します。
それがない場合(個人事業者や会社経営者等)、様々な資料で立証することになります(源泉徴収票、確定申告書、給与明細、収入が入金される預金通帳、自分が働けないことで他の業者に委託したりアルバイトを雇った場合にはその支払の領収書等)。給与所得者以外のケースでは「事故で減った収入の額を証明する」必要が出てきて、この証明に苦労することがあります。できるだけ証拠を残すようにしてください。
また、主婦などの家事従事者の場合には、家事労働分が休業損害となりますが、この場合には、「賃金センサス」という統計資料等で計算を行います。5 逸失利益
(1) 後遺障害による逸失利益
交通事故の後、治療をしたにもかかわらず、結果として後遺障害が残ってしまうことがあります。この場合には「後遺障害によって、事故以前よりも労働能力が低下したことにより、将来の収入が減少する」と考えられます。このような損害を「後遺障害による逸失利益」と言います。
後遺障害には、最も重い1級から、軽い14級まで14段階の後遺障害があります(自動車損害賠償保障法施行令2条の別表1と別表2で定められています。)。また、労働能力喪失率に関しては、国土交通省及び金融庁の通達「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」で、各等級ごとの一般的な「労働能力喪失率」が定められています。後遺障害等級の一覧表や上記の支払基準については、国土交通省の「自賠責保険・共済ポータルサイト」で公表されています。
逸失利益は、被害者の年齢、実際の収入、後遺障害等級と労働能力喪失率、後遺障害の仕事への影響、事故後の実際の減収状況、等に応じて計算されます。
後遺障害による逸失利益を請求する前提として、自賠責保険において後遺障害等級認定を受けることが通常です。治療が終了した段階で、医師に自賠責保険所定の「後遺障害診断書」を作成してもらい、自賠責保険で等級認定をしてもらいます。(2) 死亡による逸失利益
被害者が亡くなった場合には、遺族が「被害者が生きて働いたならば、将来得られたはずの収入」を請求することができます。これを「死亡による逸失利益」と言います。
死亡による逸失利益は、被害者の年齢、実際の収入、学歴、家族構成等に応じて計算されます。6 慰謝料
交通事故の被害者は、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。具体的には、入院及び通院治療の期間に応じて認められる「入通院慰謝料」、後遺障害の程度に応じて認められる「後遺障害慰謝料」を請求できます。
また、被害者が亡くなった場合には、被害者の遺族は「死亡慰謝料」を請求できます。(1) 入通院慰謝料
治療が終了するまでの期間(入院期間及び通院期間)に応じて認定されます。入院及び通院の期間が長いほど高額となります。
慰謝料に関しては、自賠責保険、任意保険、裁判所で、それぞれ計算の仕方が違います。自賠責保険の基準については、上記5の「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」で治療日数1日あたり4,300円とされています。任意保険の基準については公開されておりません。裁判の場合には、個々の裁判官が判断するものですので、公式には「裁判所の基準」というものは存在しませんが、実情としては、事案間の公平を保つために、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されている慰謝料基準に沿って判断されています。
赤い本2024年版によれば、大まかな金額は以下のとおりです。(例1)1年間入院 → 321万円
(例2)1か月入院し退院し、その後半年間通院 → 149万円
(例3)通院のみ半年間(1週間に平均2回以上通院) → 116万円
(例4)同上。ただし画像所見がなく自覚症状のみ。 → 89万円
もっとも、上記は一つの目安であり、実際の裁判の結果では、これより高額又は低額の認定となることもあります。
慰謝料に関しては、このように3種類の基準があり、一般的には裁判所の基準(赤い本の基準)が最も高く、自賠責保険の基準が最も安く、その中間が任意保険の基準と言われています。
なお、「赤い本」は、日弁連交通事故相談センター東京支部で購入できます。同センターのホームページに購入方法が説明されております。2024年版は、上下巻のセットで3200円です。(2) 後遺障害慰謝料
上記(1)の入通院慰謝料とは別に、後遺障害が認定された事案については、後遺障害慰謝料を請求することができます。
後遺障害慰謝料についても、赤い本で、過去の裁判例に基づき基準を公表しており、裁判においては、概ね、この基準に沿った慰謝料額が認定されています。2024年版では、例えば、一番軽い14級の後遺障害で110万円、最重度の1級で2800万円が基準とされています。(3) 死亡慰謝料
死亡慰謝料についても、赤い本で、過去の裁判例に基づく裁判所の基準を公表しています。
2024年版の基準では、被害者の立場(家族の中での立場)によって、慰謝料の基準を次のとおり公表しています。一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2500万円
その他 2000万円~2500万円
7 将来介護費用
他人の介護が必要な重度の後遺障害が残存した場合「将来介護料」が認められます。この額は、明確な基準化がされていないこともあり、裁判では、非常に大きな争点となります。一般的には1級の被害者を近親者が介護する前提で、日額8000円程度のものが多いですが、日額2万円を超える将来介護料を認めている裁判例もあります。
【その他の費用】
以上は典型的な損害項目を挙げただけです。このほかにも、交通事故による損害として認められるものは多数ありますので、「これは損害として認められるのか?」と疑問に思ったら、専門家に相談してください(相談窓口はQ1-1参照)。
例えば、重度の後遺障害の事案に関しては、家屋の改築費用、介護用品や介護用車両の取得費用(将来の買換え費用)、後見人等の選任費用や報酬等も認められることがあります。
いずれにせよ、事故によって支出することになったものについては、必ず領収書等の証拠を保管しておくこと(保険会社に「それは出ません。」と言われても、絶対に捨てないこと。)が重要です。
- Q4-4
- 交通事故の損害賠償請求権には、時効がありますか
- Q4-5
- 保険金の請求権には、時効がありますか
- Q4-6
- 交通事故でケガをして、病院に通っています。保険会社の担当者から「治療の際は、健康保険を使ってください。」と言われました。交通事故なのですから、私の健康保険を使う必要はないと思うのですが、自分の健康保険を使うべきなのでしょうか
- Q4-7
- 交通事故の「過失割合」「過失相殺」というのは、何ですか。その割合や比率は、どうやって決めるのでしょうか